01.スリーシンフサンズ
──この曲は、これまでジューイくんが書いてきた所謂ビートリーな曲調の中では、かなり白眉な曲だと思うんですね。
ジューイ そうですね。
──で、中盤のサイケな部分も、時代こそ違えど、かなりビートリー。
カイ そうですね。あれはもう、そのままでいいのかな、と。
──ただ、アルバムのOP曲としては非常にフックのある楽曲でありながらも、サンフジンズというバンドにとっては、そんなにど真ん中の曲でもないのかも、という気がしました。
カイ だから、この曲だけがいまいち3ピースバンドであることと関係ないんですよ。一曲目に持ってきたんですけど(笑)。一番ぽくないやつが最初にくるっていうので、まあ、イントロダクション的なことかな、と。そういうことにしました(笑)。
──この曲は二人の共作なんですけど、どの辺りがそれぞれどちらのアイデアなんですか?
カイ 基本的にはジューイの曲ですよ。真ん中が僕で。レコーディングの時には一番後回しになってた曲で。前半と真ん中とケツは全部ばらばらに録ってくっつけてるんですけど。まあ、最初の弾き語りのところで曲としては出来上がってるし、新しいメロディを足すことはないなってことで。でも、トリオなのに弾き語りもなんだから、俺らも入れろってことで、真ん中の部分を付け足したんですよね(笑)。
ジューイ あれ、びっくりしたよね。『アビー・ロード』な感じで戻ってきて。
カイ まあ、歌詞が、『神父さんも新婦さんも』って、広がりがねえんで(笑)。じゃあ、オケぐらいサイケにしようかなって。アレ、俺自分でダビングして一人で作ったんですよ。リズムだけ三人で録って。真ん中のいろいろシンセみたいの入ってるところね。家で全部やって。『こんな感じでどうすか?』って(笑)。
──そもそもサンフジンズの場合、詞先/曲先どっちなんですか。
ジューイ 詞先が多かったんですよね。
カイ この曲はまずは僕が『3回目なんだ』っていうのを送って。タイトルを思い付いたんでしょ、最初。まあ、そういうのが多いけど--サンフジンズのサーフジーンズだの、サンフジンズのスリーシンフサンズだの(笑)、ややこしくしよう、みたいのがあって。で、スリーシンフサンズっていう言葉が出てきて。てことは、神父さんが三人いるってことだなと思って。じゃあ、結婚を三回する歌でいいな、と。で、あの歌詞を送ったら、ああいう立派な弾き語りになって返ってきて。で、真ん中つけたっていう。こういう歌詞で『神父さんも/神父さんも/新婦さんも』って言ってね、みたいのは決めてて。注文してね。
ジューイ う~ん、三回かあ、三回言うしかないなと思って(笑)。でもね、そういうのってすぐ出てくるんですよ。お題があると。
──ギターウルフが言ってるみたいに、タイトルが決まったら曲の8割は完成だみたいな言い方って、間違ってないんですよね。
カイ スリーシンフサンズってことで、歌詞に3ってことが出てくるんで--他の曲もありますけども--歌詞も絶対3回ずつ言えっていう。だから、譜割っていうんですかね、構成も謎になってくるんで。それでしょうがなしに出てくるアイデアっていうのもあると思うんですよね。
──三回繰り返すという構成って、縛りなわけじゃないですか。
カイ 縛りですね。
──音楽って、バンドもそうですけど、構成にしても、縛りがあった方が面白くなる。
カイ そうなんですよ。面白くなるっていうか、わりと作るのか簡単になる。実はね。
02.じょじょ
──これはわりと早い時期--何をやるのか、まだ見えてなかった時期に曲をやり取りしてた時期の曲ですか?
ジューイ これは最初のころ。
──じゃあ、まだ大地くんもいなくて。
ジューイ まだいなかった時期で。これはAメロの部分を自分は作ったんですけど。ただ、アイデアとしては、俺がスウェーデンかどこかに旅行した時に作った曲なんですけど。俺の中では民生さんっぽい部分がある曲なんで、なんとか歌ってほしいな思ってて。
──この曲、乱暴に言うと、パートごとに、チェット・アトキンスみたいなカントリー風味、もしくは、スキッフル寄りのベース・ラインが聴ける曲なわけですけど。
カイ そうですね。まあ、言ってみりゃフォーキーな。ビートルズの初期というか。
──63、64年。
カイ そういうことだと思うんで。だから、やっぱりポール(・マッカートニー)さんですかね(笑)。ポールさんが歌ってる感じ。ポールさん歌ってるけど、ちゃんとライブでは弾くからね。だから、自分もちゃんと弾かなきゃいけないのかな、と(笑)。
──ドラム的には、軽めで、ごく普通の8ビートをやってはるんだけど、でも、実は非常に難しいっていうタイプの太鼓ですよね。大地くん的には、結構、大変じゃないですか。
ケン 大変なんですよ。大変な理由のひとつに、最初に岸田さんと民生さんが二人で書いてた曲というのは、ドラムも含めて録音されているんですよ。
ジューイ ライブとかって以前に、もう録音しようっていうことでデモを作ってたんで。
カイ 二人で録音してた曲が何曲かあったんですよ。だから、(大地くんは)俺のドラムを先に聴いてるの。
ケン それがデモというよりも、結構なクオリティで。
──それはちょっと嫌だね。
ケン 嫌というより……。嫌ですね(笑)。
一同 (笑)。
ケン 歌う人って、ドラム上手いんですよ。曲っぽいドラムというか。勿論、歌とも馴染むし。デモのレベルを遥かに超えてて。それを無理やり『俺はこうだ!』っていう感じで叩く気にもなれないので。だからって、真似しようというのでもなく。だから、曲に対してシンプルにというか、タカタッタッタっていうフィルインとかも自然にしようと思って。でも、案配は難しいですよね、すごく。
──あと、今、このタカタッタっていうフィルの感じってないですよね。特に日本だと。
ケン ないですよね。
ジューイ いいフィルですよ、ほんと。
カイ わりと俺、連発してますけどね。
──(笑)。
カイ タカタッタは深い、みたいな(笑)。
ケン 深いですよ、本当。
カイ それこそスティーブ・ジョーダンのタカタッタは深いんですよ。『何? そのタカタッタ?!』っていう(笑)。そういう感じが、実は8ビートの肝なのか、あの人にはそういう見えないものが見えてるのか、とか、そういうことを思わせるタカタッタなんだよね。でも、それぞれのタカタッタがあるからね。
ケン だから、本場のタカタッタを知ってるギョーイさんの--。
カイ を聴いた俺のタカタッタを聴いてるから中途半端なんだよ(笑)。
──いずれにせよ、あの刻みと跳ねというのはこの曲の肝だと思います。
カイ でも、それはドラムだけでは出ないもので。やっぱりベースとドラム、まあ、ギターも勿論ですけど、全体のグルーヴというのはその人だけではないですから。どうにでもなると言えばどうにでもなるし、逆にどうもならんときもあるでしょうし。そこはやっぱりみんなでやってて、繰り返してやってくうちにわかっていくことが多いですよね。『ああ、こういうことか』っていう。
03.ふりまいて
──サンフジンズの場合、二人ギタリストがいるわけですけど、ジューイくんは主にテレキャスター。
ジューイ が多いですけど、ギョーイさんのを借りたこともありました。
──で、ギョーイさんの場合は、主に330なり、ハムバッカーのギター。
カイ うん、P-90か、ハムバッカー。
──そういうギターの音色が曲のグルーヴに影響を及ぼすところもありますよね?
カイ あります。
──じゃあ、そこはかなり曲ごとに?
カイ そう、ギターの場合は確かに二人いるんで広がってるんですよ。岸田サウンドは僕はよう出さんしね。テレキャスのああいう音というか。アンプとかも使い回してるんですけど、確実に違う音が出るんですよ。弾く人が違ったら違うっていうのは当たり前だけど、やっぱ音色に関してはそれぞれのコレっつうのがあって。そこがまたこの、変わったときに新鮮なのかなっていう。
──この曲のイントロの開放を使ったギター・リフとかはジューイくんですか?
ジューイ あれは俺ですね。
──これはテレキャス?
ジューイ テレキャスですね。
──ジューイくんは開放好きだよね。そういうカラーが前面に出てる曲。
ジューイ 開放好きですね。ギョーイさんが弾く所謂ロックンロールぽいギターっていうのは、僕らもやらんことはないんですけど、俺がやるとビートルズとかにはならないんですよ。もっといなたいやつになってしまうんで。それをガンっとバンドでやるとすると、もうジャンルも変わってしまうんですね。自分が普通に弾く時は、ギターなんだけどギターぽくないというか。響きもそうやし、ロー・コード多いし。リチャード・トンプソンとか、ピート・タウンゼントみたいな。で、コードにテンション入ってるの好きやから。これとかも、最初のAメロとかBメロはギョーイさん作ってきたやつやから、自分が弾くと形は変えてしまってるんですよ。
カイ だからね、こういう曲は、俺は弾けないですね。どうやって弾いていいのかわかんないですよ。ジューイの曲、難しいんすよ。多分、“パン屋さん”も弾けないな。指見て、『……どこ押さえてんの?』みたいな(笑)。そういうのが多いかな。『チューニング変えてんの?』とか。